ポリアの壺問題の帰納法も計算も要らない証明

ポリアの壺問題 (Polya's urn problem) というのは確率に関する有名問題で、次のようなものです。

壺の中に赤玉がa個、白玉がb個入っている。ある正の整数kを決めておく。これから次の試行を繰り返す。

  • 壺の中から1個玉を取り出し戻す。その玉が赤玉ならば赤玉をk個、白玉ならば白玉をk個、壺に新たに加える。(全体の個数はk個増える。)

このとき、n回目に取り出す玉の色が赤玉である確率を求めよ。

実は n によらずに確率は a/(a+b) となります。


この証明にはトリッキーな帰納法が使われることが多いですが、実は見方を変えて考えれば帰納法も計算も使わずに証明できてしまいます。

(証明)以下のように考えます。

壺の中にa+b個の玉が入っていて、それぞれ1からa+bまでの番号が書かれていて、うちa個は赤色、b個は白色である。ある正の整数kを決めておく。これから次の試行を繰り返す。

  • 壺の中から1個玉を取り出し戻す。その玉と同じ番号・同じ色の玉をk個壺に新たに加える。

さて、n回目に取りだす玉の番号はどうなるでしょうか?答えは簡単です。どの番号も等確率、つまり 1/(a+b) の確率で出ます。なぜなら、番号については最初の条件もそれぞれの試行も各番号に対して平等だからです。

さて、赤玉はa+b個の番号のうちのa個を占めていますから、赤玉が出る確率は a/(a+b) であると一瞬で分かります。(証明終わり)

どうでしょうか、もう帰納法なんかを使って証明していたのが馬鹿らしく思えませんか?

学校でこの問題を扱って、家で寝る前にこの証明を思い付きました。ポリアの壺は受験数学でもよく扱われる題材なのに、この証明を見かけたことがないのは意外です。(さすがにこの証明を思い付いている人はいると思いますが。)もちろんこの証明はaとbが整数だから成り立つのであり、aとbが実数であるような(抽象化した)問題には適用できません。しかし具体的な連鎖する試行を扱う確率の問題において、「あえて区別する」「あえて同一視する」という手法で上手く解けるものは非常に多いと思います。