「秤」の謎

天秤は「てんびん」。では秤量は?

答えは「しょうりょう」です。

なぜ同じ漢字に「ビン」と「ショウ」という全く違う2つの読みがあるのでしょう?その答えが「慣用音」です。

「秤」という字は「称」の俗字であるので本来の読みは「ショウ」です。旁の「平」は天秤が平ら、公平の意味で、音を示しているわけではありません。よって会意文字です。「称」の項を見ると確かに「はかり」という意味があります。よってこの字を使うのが本来は正しいように思えますが、「たたえる」等の意味と区別するために「秤」を使っているようです。

では「ビン」は?辞書には慣用音であると書かれています。おそらく日本で「平」という文字を見て勝手にそれらしい読みをつけたのでしょう。なお、漢音と呉音の関連にみる拗音簡略化の例には、「ビン」は疑似唐音であると書かれています。唐音をわざわざ「疑似」するなんて恐ろしい。「テンビン」に関しては語呂がいいからこう読んでいるのかな、とも思います。

慣用音は言ってしまえば昔の日本人の誤読ですよね。日本の漢字は結構慣用音が使われていて、漢字を勉強する時には正直ややこしいです。
まあでも、それをこんなふうに楽しんでみてもいいのではないのでしょうか?

(参考文献:新漢語林初版)